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【事例】データ利活用で農産物の生産を効率化し、生産量を3倍に高めた中小企業

農業では、天候による影響は甚大で生産量や品質には大きな影響があります。特に中小企業では少量多品種生産は避けられることもなく、農家はいろいろな農産物に挑戦しています。

この会社では、キクラゲを建屋内で栽培しており、同じ建屋敷地内で最大の生産量を確保するには、ち密なデータ計測と活用が必要として、以前の温度計や湿度計だけに頼ったデータ測定から、温度計・湿度計・二酸化炭素測定器・光センサー測定とデータ蓄積・分析管理に変えました。いわゆるデータの見える化とBI分析ツールの導入です。

温度や湿度、二酸化炭素、照度などをデータ蓄積することで、キクラゲ栽培の成長との関連性に着目して、データ分析に基づく生産管理方法によって、生産量は3倍という大きな成果を上げています。光熱費等のコストも見える化によって、冬場では約20%程度の経費削減も実現しています。

今後は、遠隔操作での環境調整に挑戦することで、より多くの作物を管理できると思われます。

出来れば、全国の農家への導入先行事例として、広く普及してほしいものです。

 

企業概要

企業名 有限会社静岡ラボ
所在地  静岡県湖西市
従業員数 20名
資本金  2,000万円
事業内容 農業・林業

静岡県内シェアトップクラスのキクラゲ生産業者に

静岡県湖西市の有限会社静岡ラボは、キクラゲを主力とした農産物の生産を手がけ、静岡県内のシェアはトップクラスを誇る企業。特にキクラゲは国内でも珍しい鉄筋コンクリートの建屋内で栽培している。年間を通して安定的な生産が可能となり、中規模や小規模の農家にとっては、頭を悩ませる季節による価格変動の問題を解決している。静岡ラボはキクラゲ等の農産物を生産する以前、試験用・治験用のモルモットを無菌室で飼育する事業を手がけていたが、需要の減少に伴い事業転換を決意。地元・静岡県で盛んな菌茸類に目を付け、約10年前に競業が手薄な国産キクラゲの栽培を始めた。

少量・低価格を克服するための施策を展開

キクラゲの栽培事業を始めた当初の生産量は、年間で約10トン程度(生のキクラゲ換算)だった。キクラゲは当時、珍しい商品だったため、市場でも値が付きづらく「1パック10円でも買い手がつかなかった」と木村取締役営業部長は言う。少量生産に加えて価格が安く、キクラゲ栽培だけで事業継続するには難しい状況だった。販路開拓のため、道の駅などの直売所での販売や、安定供給・安定コスト・国内生産を売りに商談会に参加して徐々に販売先を広げていった。販路開拓が進むにつれて、課題となったのが生産量の確保だ。生産量を増やすには、単純に作付面積を広げればよいが、建屋栽培のため限りがある。そこで、建屋栽培で生産効率を高めるために、着手したのが生産のデータ利活用だった。2018年に、価格や性能が見合った建屋の温度や湿度、照度を計測する機器を導入し、スマートフォンでも確認できるようにした。

データ利活用により生産量高めコストを下げる

「どこにいても建屋の環境が一目で分かり、その環境を一定に保つことで、より安定的により良い製品を供給できる」木村部長は、生産のデータ利活用のメリットについて、こう強調する。中小規模農家にとっては目先の売上げが大切となり、デジタル設備投資には二の足を踏む例がある。静岡ラボにも例に漏れず、反対意見はあったが、最終的に木村部長が、「従来の勘に頼った栽培方法では限界がある。生産量や品質にも差が出てしまう。デジタル機器を入れれば、正確なデータに基づいた生産ができる」と社内を説得して回った。社内からの賛同が得られた木村部長は、20~30cm四方の箱に、温度計・湿度計・二酸化炭素測定器・光センサーで構成した機器を、1台建屋の中心に置いた。以前は無造作に温度計を配置して温度等を計測していたが、デジタル機器を導入し試験すると、建屋の中心に1台置くことで、最適な生産環境が分かった。機器を導入し、温度や湿度、照度などのデータ分析に基づく生産により、導入後の生産量は10年前と比べて3倍に増え、生産量の安定性が増した。また、効果は生産量だけではなく、光熱費等のコストが見える化したことで、経費削減にもつながった。「夏場で約5%、冬場では約20%程度は最大でコストを抑えることできた。」と木村部長は話す。将来的には、機器の遠隔制御の機能を取り入れ、データの蓄積や利活用の幅を広げていく方針だ。

中小企業白書2022年より