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【事例】IoT開発体制を構築し新規事業参入を実現する

IoTに使われた圧力計

圧力計(マノメーター)は、流体の圧力を測定する計器です。油圧、水圧などの液圧や、空気圧、ガス圧などの気体のゲージ圧を電気的に検出する変換器です。

圧力計には、液柱やおもりの重量に圧力を平衡させる重力平衡式、圧力によるブルドン管やダイヤフラムなどの変形を用いる弾性式、電気抵抗の圧力による変化を用いる電気抵抗式、結晶の圧電現象を利用する圧電気式などがあります。

圧力計には、あらかじめ設定した圧力になると電気信号を発信できるものがあります。
ポンプで発生する異常現象(配管の詰まりやポンプ能力低下)を、いち早く発見して重大な事故に至る前に警報を発信したり、設備を停止に使われます。

圧力計の専業メーカーには、次のようなものがあります。

長野計器株式会社

株式会社長野汎用計器製作所

株式会社木幡計器製作所

業界トップの長野計器株式会社は、圧力計測制御機器の専業メーカーとして120年以上にわたって事業を展開しています。
長野計器株式会社のグループ会社である株式会社長野汎用計器製作所は、小形圧力計や汎用形圧力計、グリセリン入り圧力計、微差圧計、微差圧スイッチなどを製造しています。

今回注目した株式会社木幡計器製作所は、創業時から一貫してブルドン管圧力計を製造しています。

ブルドン管圧力計とは、構造が簡単なため取り扱いが容易で、幅広い圧力範囲の測定が行えます。
各産業分野で使用されており、空気圧式調節計、変換器、またはその周辺機器用として用いられる小形圧力計です。

しかし、ブルドン管は経時的に劣化するため、3か月~1年を目安として保守点検を定期的に行うことが必要となります。

商品価格が低下することを防ぐには

木幡計器製作所でも、自社商品が主力船舶業界から、汎用化することでコモディティが発生することで、商品の価格が低下することが避けられなくなりました。

また少子高齢化の影響から、顧客企業の熟練技術者の不足によって、圧力計の日常管理が不十分なことを発見しました。

そこで、顧客企業の潜在的なニーズをまとめてみると、紙ベースの管理はコストがかさむこと、自然災害を想定して現場の安全性を確保したいこと、信頼できるデータ管理ができることなど、「安心・安全・信頼」を届ける会社が求められていることに気づきました。

そこでIoT技術による新商品開発に至るのですが、新たに雇用したIoT技術者と既存の圧力計測技術者とのぎくしゃく感が、新しい課題となりました。

きっかけは清掃活動を始めてから

しかし、社長が考えた毎朝の清掃活動によって、社内の空気が変わってきた。

従業員を4チームに分けて、事務所や工場、屋外などを清掃する中で、場所ごとに自然災害を想定した防災対策などテーマを設定し、意見交換する機会を作ったことです。

IoT技術者メンバーがハンダ付けの社内講習会を開催し、互いのノウハウを補完し協力し合うことで距離が縮まり、社内にIoT製品開発に向けた土壌がだんだんと醸成されていった。

その結果、同じ目標に取り組むことで、社内の結束力が高まって、社員間連携のきっかけになった事例です。

IOT

IOT

【事例】:株式会社木幡計器製作所 

大手出身のベテラン人材と既存メンバーの連携により、IoT事業の開発体制を構築し、新規事業への参入を実現した企業 

所在地  大阪府大阪市 

従業員数 17名 

資本金  2,500万円 

事業内容 業務用機械器具製造業 

▶自社製品をユーザー側の視点から見つめ直し、工業計器のネットワーク化に着目 

大阪府大阪市の株式会社木幡計器製作所は、1909年創業の圧力計専業メーカーである。 

主力の圧力計測器は造船業などで使われているが、汎用化による価格低下圧力が強く、市場は寡占化している。 

この閉塞感を打ち破ろうと、同社の木幡巌社長は顧客が求める本質的な価値を考え、「計測器の開発・製造にとどまらず、『安心・安全・信頼』を届ける会社になろう」と自社事業を再定義した。 

自社製品をユーザー側の視点から見つめ直すため、木幡社長は、同社製品が設置されている工場の現場や建物の機械室に足を運んだ。 

すると、熟練メンテナンス技術者の不足から巡回点検による日常管理が不十分な計測器や、計測器の点検記録を紙ベースで管理する現場が散見され、管理コストを抑えつつ安全性の確保を実現したい企業側の潜在的なニーズを発見した。 

現場指示計として設置されている計器のガラス面に指針読み取りのセンサと通信モジュールを装着し、IoTシステムで管理することで、これまで独立していた工業計器のネットワーク化と遠隔での保全管理が可能になると木幡社長は考えた。 

しかし、IoT関連製品の開発を新規事業として立ち上げるには、新規事業の中核を担えるIT人材の確保が課題となった。 

 

▶大手企業出身のベテラン社員とプロパー社員の連携により、IoT製品開発の組織風土を醸成 

そこで同社は、2012年に大阪商工会議所のイベントがきっかけで、大手電機メーカーから早期退職した電子回路のベテラン設計者2名を採用。 

翌年には更に2名大手企業出身の専門人材も加わった。同時期に2名ずつ採用し、孤立しないよう配慮した。 

陣容は整ったが、大手企業と同社では企業文化が異なり、皆が一体感を持つまでに2年近く掛かった。 

一体感を高めるきっかけとなったのは朝礼後の清掃であった。 

従業員を4チームに分けて、事務所や工場、屋外などを清掃する中で、場所ごとに自然災害を想定した防災対策などテーマを設定し、意見交換する機会を作った。 

同じ目標に取り組むことで社内の結束力が高まっていった。 

また、IoT関連の展示会に出展する際に、中途採用メンバーとプロパー社員が一緒に準備を進めることで、プロパー社員の知識が増えていった。 

試作開発においてもプロパー社員が協力して製作し、従来製品の不具合には中途採用メンバーが問題解決に協力。 

また、中途採用メンバーがハンダ付けの社内講習会を開催するなど、互いのノウハウを補完し協力し合うことで距離が縮まり、社内にIoT製品開発に向けた土壌が醸成されていった。 

▶社内の専門性向上により、2021年11月期は売上高が前年度比20%増の見込み 

2014年には「関西積乱雲プロジェクト」と呼ぶ優れた要素技術を持つ中小企業が集まるコンソーシアムにも参加。 

 同社のデジタル化を後押しした。2017年には「後付けIoTセンサ・無線通信ユニット」を開発するに至った。 

 IoT分野の製品やサービスは要素技術が多岐にわたり、大手企業でも全てを自社開発できる企業は少なく、こうした企業同士の実証実験など密な関係も大いに役立った。 

 2020年11月期は感染症流行下で計画には届かなかったが、後付けIoTセンサは主力製品の一つにまで成長し、2021年11月期は売上高で前年度比20%増以上を見込む。 

 「2025年の大阪万博では『健康』をテーマに別途取り組む、IoT技術応用の医工連携の取組をアピールしたい。」と木幡社長は語る。 

以上 中小企業白書より