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【事例】RPAの導入で業務自動化して残業時間短縮

ルートセールスの御用聞き活動を、数値化した営業訪問先リストに変更して、毎日の訪問先をRPAロボットが自動作成している。
RPAロボットによる、営業訪問先のリスト化は、経験豊富なベテランの営業ノウハウを聞き出し、アポイントメント頻度や優先順位を数値に置き換えた「御連絡必要度」という新指標を作成した。

RPAロボットでは、数値化した「御連絡必要度」を自動計算させて、それを顧客リストに組み込んで、訪問優先度の高い顧客を自動的にリスト化している。

その結果、従業員の残業時間が1人当たり月3時間減少し、顧客と親密に会話する時間が増えたことが仕事に対するモチベーション向上に貢献していた。

コロナ禍で「卸売部門」が前年同期比で約20%減に対して、ロボット導入した「御用聞き部門」
では3.5%減にとどめた。

企業概要

キミセ醤油株式会社
所在地  岡山県岡山市
従業員数 70名
資本金  1,500万円
事業内容 調味料の製造・販売

売上げの約80%を「御用聞き」による一般消費者への直販で稼ぐ老舗

岡山県岡山市のキミセ醤油株式会社は、1866年創業の老舗で、しょう油やみそ、ポン酢などを独自の手法で製造する。売上げの約80%は中国・四国地方の顧客を35人ほどの営業担当者が月1回のペースで直接訪問する「御用聞き」で稼ぐ。同社の永原琢朗社長は1998年に入社後、当時出始めの電子手帳を活用し、詳細な顧客情報や購入履歴などのデータベース化に取り組んだ。2010年の社長就任後も、生産性の向上により従業員の残業時間を減らすよう業務改善を行ってきた。しかし、きめ細かな営業活動のためには、顧客情報の管理業務などに時間が掛かり、従業員の退社時刻が遅くなるのが課題だった。

RPAの導入で連絡を必要とする顧客の抽出、リスト作成を自動化

永原社長は、2019年1月に経営サポート事業を行う企業の勉強会でRPAの有効性を知る。勉強会の仲間が運営するビジネスホテルがRPAを導入していると聞き、すぐに視察した。そこで、5~6店舗から送られてくる営業日報の数字を、支配人が1クリックすると、僅か数分で自動集計が完了するのを目の当たりにした。支配人によれば、かつては毎日帰り間際に30分~1時間も要して集計していたという。永原社長は、その動作を実際に見て感銘を受け、視察に同行した導入チームのリーダー候補と相談して導入を決定。3か月ほどの準備期間の後、2019年秋にコールセンターで電話をかけるべき顧客を自動抽出する機能を実装。続いて毎日の営業訪問先リストの自動作成に着手した。永原社長は、RPA導入のリーダーにITリテラシーの高い若手を起用し、経験豊富なベテランの営業ノウハウを聞き出しながら、アポイントメントの頻度や優先順位を数値に置き換える取組を進めさせた。その数値を基に「御連絡必要度」という新指標を自動計算させ、それを顧客リストに組み込むことにより、訪問優先度の高い顧客を自動的にリスト化できるようになった。

業務の効率化が時短とモチベーションの向上につながる

RPA導入の際は、キーワードによる検索や抽出ができるように、顧客情報に入力する用語を社内で統一した。導入時にはIT導入補助金も活用した。導入前1年間と導入後の1年間を比較すると、従業員の残業時間が1人当たり月3時間6分減少した。コールセンターでは1件の電話アポイントを得る平均時間が2.6分短縮できた。感染症拡大の影響で2020年2月期の売上げは減少したが、RPAを導入していない百貨店ルートなどの卸売部門が前年同期比で約20%減だったのに対し、御用聞き部門は3.5%減にとどめた。RPAにより自動作成されたリストを用いて訪問先で購入履歴を一目で確認でき、携帯端末を開いて調べる時間が減少。顧客と親密に会話する時間が増えたことが売上げと仕事に対するモチベーション向上に貢献した。「SNSからネット通販への動線分析などは自分たちでプログラムを作っている。これで1日10分の時間短縮になった。今後も面倒な業務の自動化を、少しずつ積み重ねていきたい。」と永原社長は語る。

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