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【事例】マーケティングのデジタル化でピンチをチャンスに

マーケティングをチラシからSNSなどデジタル化へと大胆に変えて成功している事例です。
インフルエンサーに商品提供して使ってもらう方式で、最小限の投資から始めている点にも、好感が持てます。

成功へのポイントは、
1つ目は動画制作のスタッフを増員したことで、スピーディーに正確な情報を配信できる自社メディアを構築したこと。
2つ目は「オンライン酒蔵見学」や「ライブ配信」を利用することで、国内はもちろんのこと海外にも広くアピールするきっかけを作ったこと。
3つ目にSNSフォロワーを増やすための「1本5万円の超高級酒をプレゼントキャンペーン」の効果でフォロワーが激増したこと。

今後も継続的に、SNSでのアーンドメディア拡販や、アプリなどを使ったマーケティングの自動化など、積極的なデジタル投資が好循環を期待できそう。

企業概要

有限会社渡辺酒造店

所在地  岐阜県飛騨市
従業員数 54名
資本金  3,000万円
事業内容 酒類製造業

対面・紙媒体でのコミュニケーション醸成に取り組むも、最近は成長が鈍化

岐阜県飛騨市の有限会社渡辺酒造店は、18年連続でモンドセレクション最高金賞を受賞し、ANAファーストクラスの採用酒にも選ばれた「蓬莱」をはじめとする清酒の製造・販売を行う企業。従来酒販店への販売が中心だったが、酒の量販店が台頭し流通構造が激変した2000年代初頭以降は、消費者との直接取引を重視する戦略を取っている。

観光客向けの老舗酒蔵の見学会や、15,000人が集まる人気の交流イベント「蔵まつり」を実施して、消費者との対面でのコミュニケーションづくりを丁寧に行ってきたほか、企画性の高いチラシの発行など紙媒体による営業にも注力。2013年から5年間で売上高倍増を達成した。

ところが、若い世代の日本酒離れなど国内の日本酒市場の頭打ちには逆らえず、2018年に成長が鈍化。減収が明らかになった2019年8月決算後、「紙媒体に頼っていては更なる飛躍はない」と判断した同社の渡辺久憲社長は、営業とマーケティングをデジタル化することを決めた。

更なる飛躍を目指して、SNSでのマーケティングを最優先の経営課題に掲げる

まずはSNSでのマーケティングに注力した。インフルエンサーに商品を提供してインスタグラムに投稿してもらう「アンバサダー作戦」を開始。

自社のフェイスブックやツイッターでの投稿頻度を上げ、内容も充実させた。ITツールに疎い営業社員には業務時間内に学習時間を設定し、ITツール利活用のスキルの底上げを図った。対面の営業機会は減ったが営業の人員は削減せず、逆に動画制作スタッフを増員した。

これらの取組の結果、広告費用を抑えるとともに、日本酒の魅力を海外にも伝えていったことで欧米やアジア諸国など新たな販路獲得につなげることができた。そんなデジタル化の手応えが出始めた頃に、コロナ危機に直面した。

デジタル化を加速、オンライン酒蔵見学やSNSキャンペーンでピンチをチャンスに

2020年3月下旬に開催予定だった「150周年蔵まつり」は中止し、デジタル化に一層まい進することを決断した。新型コロナウイルス感染症流行の終息を祈願した日本酒を送料1,000円のみでネット販売し、即完売となった。

また、酒造作業のライブ配信や、豪州・米国・香港などをビデオ会議アプリでつないだオンライン酒蔵見学・試飲会を開催。また、インバウンド需要向けの1本5万円の超高級酒をツイッターでのプレゼントキャンペーンに転用し、キャンペーン開始前後でフォロワー数を600から10万に増やした。

さらに、BtoBの新規顧客開拓を目指し、オンライン展示会を月2回開催するなど、停滞ムードの業界をリード。戦略が功を奏し、2021年8月期の売上高は前年比93%を確保する見通しとなっている。

「今後はアーンドメディア(SNSの口コミや報道などによるメディア露出)による新規集客と、アプリなどを使ったマーケティングの自動化によって、営業社員1人当たり商談件数の倍増、受注率10%アップを目指したい。」と渡辺社長は語る。

2021年中小企業白書より