電子帳簿保存法創設の経緯

高度情報化・ペーパーレス化が進展する中で、会計処理の分野でもコンピュータを使用した帳簿書類の作成が普及してきており、経済界をはじめとする関係各界から、帳簿書類の電磁的記録(いわゆる電子データ)及びマイクロフィルムによる保存の容認について、かねてから強い要望が寄せられていました。
政府においては、こうした要望を受けとめ、規制緩和推進計画等の閣議決定、緊急経済対策、市場開放問題苦情処理対策本部決定等において、平成9年度末までに、帳簿書類の電磁的記録等による保存を容認するための措置を講ずることを決定していました。
このような関係各界からの要望や政府全体としての取組を踏まえ、平成10年度税制改正の一環として、適正公平な課税を確保しつつ納税者等の帳簿保存に係る負担軽減を図る等の観点から、国税関係帳簿書類の電磁的記録等による保存制度等の創設等が行われました。

https://www.nta.go.jp/law/joho-zeikaishaku/sonota/jirei/01.htm

今年の1月1日から施行予定となっていた電子帳簿保存法(電子取引の電子保存の義務化)は、2021年12月27日の改正で、「やむを得ない事情」があると税務署長が認める等の場合は、適用が猶予されていますが・・・

 電子帳簿保存法とは

電子帳簿保存法(以下:電帳法)は、帳簿や領収書・請求書などの処理に係かかる負担を軽減するために、電子データによる保存を認めるものです。電帳法は大きく分けて国税関係帳簿書類に関するものと、電子取引に関するものの2つに分かれます。

国税関係帳簿書類に関するものとは、具体的には、決算書類、注文書、契約書、領収書、仕訳帳、現金出納帳、売掛金元帳などを、一定の要件を満たす会計ソフトなどにより作成し、電子データにて保存することができるものです。

電帳法の概略について

取引先から受け取った紙の請求書などは、スキャナによる電子データ保存が認められますが、スキャナ保存する場合にはタイムスタンプの付与が必要になります。

電子取引に関するものとは、注文書や契約書などの取引を電子データで行った場合に、その取引情報に係る電磁的記録を保存しなければならないものです。

電帳法の保存区分は、①電子帳簿等保存、②スキャナ保存、③電子取引データ保存の3種類に分けられます。

①電子帳簿等保存

会計ソフト等で作成した帳簿や決算関係書類などを、電子データで保存すること。

②スキャナ保存

紙で受領した書類(請求書や領収書など)を、スキャニングして電子データで保存すること。

③電子取引データ保存

電子取引データとは、電子メール、ホームページ、EDIにより授受する取引などが該当。

この電子取引データを、直接データ保存すること。

いままでは電子データを出力した紙での保存も大丈夫でしたが、今後はオリジナルを電子データの状態で保存しておく必要があります。(2023年12月末までは暫定的に可能)。

保存区分概要
①電子帳簿等保存電子的に作成した帳簿・書類をデータのまま保存
例:仕訳帳 総勘定元帳、貸借対照表 損益計算書など
②スキャナ保存紙で受領・作成した書類を画像データで保存
例:契約書 納品書 請求書 領収書 など
③電子取引電子的に授受した取引データをデータのまま保存
例:電子メール、ホームページ、EDI取引 など

電子帳簿データの保存方法について

電子帳簿保存法の適用を受けようとする場合に、市販の会計ソフトやクラウドサービスを使用することができます。導入する際には、会計ソフトやクラウドサービスが公益社団法人日本文書情報マネジメント協会(JIIMA)による認証を受けたものであるかを確認します。

電子保存が認められている書類

帳簿現金出納帳、仕訳帳、経費帳、売掛帳、買掛帳、総勘定元帳、固定資産台帳、売上・仕入帳など
決算関係書類貸借対照表、損益計算書、棚卸表、そのほか決算に関する書類など
その他の証憑類契約書、請求書、見積書、注文書、レシート、領収書、契約の申込書、納品書、検収書など

スキャナデータの保存方法について

紙情報のスキャンデータ作成には、以下の点に気をつけます。

  • グレースケール(白黒)スキャンが認められるのは一般書類なので、重要書類(資金や物の流れに直結・連動する書類)は、カラーでスキャンしなければいけません。
  • 書類が大きく、一度にスキャンできない場合は、書類の原本の大きさを変更した「コピー」はできませんので、書類の原本を複数回に分けてスキャンします。
  • スキャンした書類は、入力期間が過ぎた場合などがあるので、すぐに破棄せず一定期間保持しておいたほうが良いです。

電子取引データの保存方法について

電子取引データを紙ではなく電子データで保存することは、書類の保存場所が少なくなり、書類が整理しやすいなど、企業の生産性向上でも有益となります。

保存時の要件として、

  • システム概要に関する書類の備え付け
  • 見読可能装置の備え付け
  • .検索機能の確保
  • データの真実性を担保する措置

システム概要に関する書類の備え付けと、見読可能装置の備え付けは、税務職員のみならずその企業自身が電子データを確認するのに欠かせません。

 検索機能の確保は、「取引年月日」「取引金額」「取引先」で検索できる状態にしておかなくてはならないことです。

  • 専用ソフトで機能を備える方法
  • ファイル名を「20221031_国税商事_110000」(日付_会社名_金額)として検索が使えること
  • 索引簿を作成、ファイルを検索できること

 データの真実性を担保する措置について

  • タイムスタンプが付されたデータを受け取る
  • データに速やかにタイムスタンプを押す
  • データの訂正・削除が記録される又は禁止されたシステムでデータを受け取って保存する
  • 不当な訂正削除の防止に関する事務処理規程を整備・運用する
    のいずれかを行うことが求められます。

①は取引先、②は自社にタイムスタンプが付与できるシステム導入が必要です。③はデータの保存・やりとりもシステム内で行う必要があります。④は自社で電子データの取り扱い規程を、国税庁が公表しているサンプル等を活用して定める必要があります。

なお、電子取引データの保存システムとして販売されているものの中には、データのやりとりはそのシステム外で(メール等で)行われる場合も少なくないことから、真実性の担保はDの事務処理規程で図っていることが多いようです。

保存要件概要対応方法例
検索機能の確保・「取引年月日」
・「取引先」
・「取引金額」
で検索できるようにする
1.検索機能に対応した専用ソフトを使用する
2.ファイル名を「20221031_(株)日本商会_110000」等にしてデータを保存する
3.Excel等で索引簿を作成し、保存したファイルと関係づける
真実性の担保保存した電子データの真実性を担保できるようにする。·  A.タイムスタンプが付与された書類の受け取り
· B.データに速やかにタイムスタンプを付与する
· C.データの訂正・削除が記録されるまたは禁止されたシステムでデータを受け取って保存する
· D.不当な訂正削除の防止に関する事務処理規程を整備・運用

 小規模企業・個人事業者に適した対応策

電子取引データ保存は、2024年1月から対応が必要になので、書類の数が多くなく、扱う担当者が決まって、運用方法が徹底できる場合は、次の方法が適しています。

「検索機能の確保」は、電子データのファイル名に日付・取引先・金額を付与して、日付・取引先・金額と電子データを結びつける索引簿を作成します。

「真実性の担保」は、新たにシステムを導入するにはコストがかかりますので、「不当な訂正削除の防止に関する事務処理規程」を整備・運用する方法が、最もハードルが低い方法です。事務処理規程のひな型については、国税庁のホームページからダウンロードできます。これを参考にしながら、自社のやり方にあわせて規程を作成します。

いかがでしたか。とりあえず、簡単な部分から導入してみてはいかがでしょうか。ファイル名を変えて保管を始めてみませんか。